コラム

1994年8月末から1995年7月半ばまで中国・天津に留学した時、当時入会していた『おちゃめくらぶ』(その後『陽だまり』という誌名に変更)という女性サークルの会報や、日中二ヵ国語新聞『東海国際新聞』などに投稿した体験記。中国留学に興味ない方でも楽しんでいただけると思います。1と2は原稿が行方不明。発見したらアップします。今後、写真もアップする予定(いつになるかはわかりませんが・・・)

中国語留学記

■みどりちゃんの西遊記8 (『おちゃめクラブ』95.8月号)

 皆さん、こんにちは。いよいよ留学も残すところ一週間となりました。今回は中国での生活を振り返って見て、日本と違うところをご紹介しましょう。

 天津では冬の間ほとんど雨が降らなかったのですが、夏になって雨が多くなりました。日本の梅雨のように毎日しとしと降るわけではなく、2〜3時間強い雨が降るという感じです。雷雨は急に降り出すことが多いのですが、町を走っている自転車はなぜか雨が降り出すと、どこにもレインコートを持っている気配がないのに気がつくとすでにレインコートを着ているのです。その早いこと早いこと。中国のレインコートは自転車に乗ることを前提にデザインされているので、前開きではなく、頭から被るポンチョ式です。自転車に乗り、ハンドルまですっぽりポンチョで隠し走るのです。色はすごく派手。単色のものばかりですが、黄色、紫、赤、紺、緑と目がちかちかするほど。以前、杭州で雨の日に歩道橋の上からポンチョの大群を見たことがありますが、一種異様な雰囲気があります。そのときはやけに紫が多かったのを覚えています。

 中国のお茶は、茶葉を直接大きなマグカップに入れて飲みますが、ちょっとしたコツがいります。まず第一に、お湯を注いで蓋をし十分に蒸らすこと。これでほとんどの葉は沈みます。第二に一気に飲むのではなく、すするようにしてお茶の上澄みだけを飲むこと。第三は健康法だと思ってお茶っ葉を気にせず食べてしまうこと。そして第四に「大きな」茶杯で飲むこと。私は常々中国の「茶杯」はばかでかい、と思っていたのでいろんなカップで中国式にお茶を飲んでみましたが、カップが小さいと沈んだ葉がすぐに口に入ってお茶を飲んでいるのか茶葉を食べているのかわからない…。カップの大きさ、つまり深さにはそれなりの訳があったのです。日本人は雑な飲み方だと思うかも知れませんが、中国では会議に出ても机の上にお茶っ葉入りの蓋付きマグカップとポットが並んでいて参加者が自分でお湯をついでいましたから特に乱暴な飲み方ではないようです。ティーバックもありましたが、もともと茶葉をカップに直接入れる習慣があるので片付けが楽な点を除いてあまり有難みがないようです。  違うのはお茶葉を直接入れる点だけではありません。飲み終わるか終わらないかのうちにお湯を足し、茶葉は換えずに何杯も飲むのです。中国北方で普段飲むのは炒った茶葉に香りのよい花を入れた「花茶」。ジャスミンティーが有名ですね。日本は緑茶が多いので何度もお湯を注ぐのは御法度と思われるかもしれません。
 私もこの飲み方にすっかり慣れてしまいました。日本でこの癖が出ないかどうか心配です。
 夏でも熱いお茶を飲む点も日本と違います。この夏に来日した中国人研修生は、どんなに暑い工場で作業をしても「飲料」(中国語で冷たい飲み物)を飲むと変な感じがする、と熱いお茶を要求してきました。そのうちに飲料も飲むようになりましたが「2ヵ月の研修で1年分を飲んだようなものだ」と言っていました。

 お茶にはお湯が必要ですが、中国ではホテルはもちろん、学校の宿舎の備品にもポットが必ず入っており給湯室も併設されています。学校の授業中はもとより、銀行やデパートなどどの職場でもお茶を片手に仕事をする風景が見られます。ただ、使っているのは茶杯よりもインスタントコーヒーなどの空瓶が主。持ち運びに便利なのでしょう。列車の旅をする時にも蓋付の瓶は必需品です。列車にも給湯設備が必ずあり、持参したお茶っ葉でお茶を入れ「瓜子」(味付の南瓜、西瓜等の種)をつまみがら旅をする…。お茶は中国人の生活とかなり密接な関係のようです。
 お茶の話が出たので、食べ物に関する話題で箸を取り上げましょう。中国の箸は日本のものより全体に太く長いのです。日本の箸は魚が食べやすいように先が尖っているとの話を聞いたことがありますが、中国の箸は多くの人でテーブルを囲む時に遠くの料理を取りやすいように長くなっているとかいないとか。確かに中華料理は料理が銘々皿に出てくるわけではなく、大皿に乗って出てきて、ターンテーブルに何種類もの料理を並べることが多いのでこの解説も納得がいきます。
 箸の形が違うことは見ればわかると思いますが、箸の置き方も違うんですよ。日本では横に置きますが、中国は縦に置くのです。これはどうしてかは私も知りません。どなたか知っている方がいらっしゃったら教えて下さい。

 食の話題のついでにもうひとつ。皆さんは生のトマト、どうやって食べますか? 一番簡単なのは切って塩をかけて食べる方法。ところがこちらでは砂糖をかけるのです。初めて砂糖がけのトマトを食べた時はすごくびっくりしました。慣れてみればこれもおいしいのですが。もう一つトマトでびっくりしたのはトマトと卵の炒めもの。トマトに火を通して食べるなんてちょっと想像できませんよね。でもこれは中華料理のごく一般的なメニューの一つなのです。炒めると言えば、チャーハンにきゅうりが入っています。当然、火が通っている。不思議です。

 列車には必ず湯が備え付けてあることは以前、書きましたが、列車の中でカップラーメンを食べる人が多いのにはびっくりしました。長距離を走る寝台車はもちろん、北京―天津のたった二時間の列車でもカップラーメンを持ち込み食べている人がいます。という私も車中での食事でラーメンを食べることはしばしば。どうしてこんなにラーメンを食べる人が多いのか考えてみました。一つは、中国人は冷めたお弁当を食べないから。ラーメンならお湯を注ぐので当然温かいですよね。もう一つは、多分、彼等にとってカップラーメンはかっこいいものだから。新しいものですからね。もちろん、便利で軽いという理由もあるでしょう。みなさんも旅行のお供にいかがですか。

 天津には狗不理包子(ゴープリバオズ)という肉まんと麻花(マーホア)という甘くないかりん糖のようなお菓子があります。包子は小さく、豚肉のあんがぎっしり詰まっていて肉汁もたっぷりで日本の肉まんよりずっとジューシーです。狗不理というのは店の名前で「犬も見向きもしない(ほどまずい)」という意味。この店を始めたばかりの頃は犬も食わないほどだったのが、今では中国人なら誰でも知っているほど有名なお店になりました。私は脂っこいのと豚肉があまり好きではないのでいくつも食べられませんが、天津に来たら是非一度食べて見る価値があります。麻花は直径5mmほどの小麦粉を練った生地を束にし、糸や縄のようにねじったものを油で揚げてあります。小さいのは10cmくらい、大きいのは50cmほどの長さがあり、それなりに太さもあります。ほんのり甘く、良いお茶受けになり、軽くてお土産に喜ばれます。麻花メーカーはいくらでもありますが、「桂発祥」というメーカーの「十八街」麻花が一番で、それも製造元で買うのが一番おいしいようです。気をつけなければならないのは偽物が多いこと。それもあって製造元で買うのが間違いないのです。

 中国のトイレは一般にトイレットペーパーを流せません。流すとつまってしまうのです。紙が水溶性ではないのでしょうね。確かに厚くてごわごわしています。そして驚くことにトイレにドアがないのです。公衆トイレだけですが。床に溝が一本あり、仕切があるだけなのです。あるいは、ドアがあっても鍵が壊れていることが多いのです。いくら故障が多い国とはいえ、トイレのドアの鍵くらい壊れずにいてほしいものです。

 中国ではよくカッターシャツなどの開襟シャツをズボンの上に出して着ています。これは男性も女性も同じ。また昼寝をする人を路上でよく見かけるのですが、ズボンの上に出したシャツの裾を捲ってお腹を出して寝ています。

 また、夏になると中国でもストッキングを履く人が多くなります。しかし見ていてとても恥ずかしい。というのは、スカートを履いているのに、ストッキングは足首までしかないのです。また、レストランで制服にチャイナドレスを起用しているところも多いのですが、スリットから丈の足りないストッキングが見えて、だらしなく見えます。
 彼等、彼女等に言わせればこのほうが涼しいのでしょうが、見ている方は思わず目をそらしたくなります。ファッションセンスに国民性の違いが出るのでしょうか。

 今、中国では一人っ子政策をとっています。つまり、一組の夫婦に子供は一人。当然、子供に良いものを与えようと、食事も栄養の良いものになり肥満児が増え、服装も華美になります。この服装が、また中国人のファッションセンスを疑うほどおかしいのです。ピアノ発表会の時に女の子が着るようなフリルのいっぱいついたドレスを想像してください。その材質と縫製を荒くしたような感じの服を小学校低学年程度の子が着ているのです。しかも、冬は寒いのでその下にスパッツをはいているのですよ。さらに、配色を考えればまだ見られるのに、薄汚れた黄色いドレスに黒のスパッツ、紫のドレスに赤いスパッツというようにちょっと目をそむけたくなるような組み合わせが多いのです。これも親の子供への愛の表われの一つなのでしょうが、センスとともにどこか間違っているような気がします。

 センスの話題に続けてマナーの話。こちらに来てすでに10カ月。中国での生活にもほぼ慣れましたが、一つだけどうしても受け入れられないものがあります。それは部屋の中だろうが人前だろうが構わずたんを吐くこと。こちらはほこりが多いので異物を外に出す回数が多いのもわかりますが、ガー、ペッとあたり構わず出すのはやめて欲しいですよね。せめてティッシュで受けて欲しい。どんなに経済が発展して世界中の注目を集めても、このマナーを目のあたりにしたらまだまだ先進国の仲間入り出来ないのも無理がないように思われます。

 留学中、長期の休みに一緒に旅行したメンバーに髪の長い子がいました。背格好は明らかに男の子なのに、私たちが歩いているのを自転車で追い越していく中国人は、通りすぎる人通りすぎる人みなが振り向いて食い入るように彼の顔を見るのです。「こいつ、男なのか、女なのか」と。駅のポン引きがほとんど例外なく「小姐(お嬢さん)」と声を掛けたのはまだよかったのですが、彼が男子トイレに入ろうとした時に「おまえは向こうだ」と言われた時には、人事だと笑っていた私もちょっと可哀そうになりました。中国人にとっては「髪の長い人イコール女性」なのでしょうか。だったら今の日本は女性の人口が大幅に男性を上回ることになってしまいます。
 この考え方の違いはどこから来るのでしょう? 考えれば考えるほどわからなくなります。

 夕方4時ごろから買い物に行くのがこのごろの日課になっています。そうすると近くの自由市場で自転車に乗り買い物かごを提げた男性の姿をよく目にします。仕事が終わったその足で夕食の材料を買いに来ているのです。もちろん女性の方が多いのですが、日本ではこんな光景はほとんど見られませんよね。これは男女共働きと男女平等の表われです。中国の男性は買い物に限らず、家事をよくやります。衣、食、住は生活の基本ですから男女を問わず家事をするのは、考えて見れば当たり前のことですが、日本の生活に慣れてしまうとこの光景が珍しく見えてしまうのでこわいですね。男女平等が日本より進んでいる点では中国も捨てたものではないな、と思います。

 と、いろいろ書いて来ましたが、中国からの投稿はこれが最後です。7月8日に天津を離れ、上海、広州、しんせん、香港、マカオを経て、19日に香港から名古屋へ飛びます。この後は日本で中国の資料を整理し、留学のまとめを書こうと思います。では、再見!


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